なぜ鋳造するとワックスの時より少し縮むのか
2022年05月27日
こんにちは。
今回は、「なぜ鋳造するとワックスの時より少し縮むのか」を解説します。
ワックスの鋳造が上がってきた時、
「ワックスの時よりちょっと小さくなってる…?」と思ったことはありませんか?
もしくは彫金の先生から
「ワックスは縮むから、指輪は0.5~1号くらい大きめに作りましょう」と言われたことがあるかもしれません。
縮むってどういうこと?そんなことあるの?
結論から言うと、縮みます。
でも金属って硬いですよね。そんな簡単に縮むんでしょうか?
鋳造の工程を確認しながら解説していきます。
リングのワックスに湯道(地金の通り道)を付け、ゴム底に立て、ステンリングをかぶせます。
水と石膏を混ぜた埋没材をステンリングの中に流し込みます。
満タンにしたら、真空脱泡機で振動させ、中の気泡を取り除きます。
ケーキを焼く前、型を少し持ち上げる→落とすという作業をして気泡を取り除きますね。あれと同じです。
埋没材を自然乾燥させ、ゴム底を外します。
電気炉で加熱し、ワックスを溶かします。
ワックスと同じ形の空洞ができます。
埋没材を焼成機に入れ、高温で焼き固めます。
ここで「鋳造の収縮」が起こります!
焼く前の埋没材は、自然乾燥をさせてもまだ水分を保持しています。
加熱されるうちに水分が蒸発し、埋没材が固くなります。
水分が蒸発した分、埋没材の体積は減ります。
埋没材が丸ごと収縮するので、中の空洞も収縮するのです。
ざっくりと図にするとこんな感じです。
水分がなくなった分縮みましたね。
埋没材が固まったら、溶けた金属を流し込みます。
この時にはすでに埋没材は収縮した後なので、銀を流そうが真鍮を流そうが違いはありません。
※プラチナとホワイトゴールドは使用する埋没材が異なり、あまり収縮しません。
「収縮率はどのくらいか」
「収縮を見越してどのくらい大きめに作ればいいか」
というお問い合わせをいただくことがありますが、
この通り水分の蒸発具合によるので、あまり具体的なアドバイスができないのです。
また、1個の作品でも収縮率に差が出ることもあります。
たとえばヘッド部分が大きいリングを鋳造すると…
青破線を見てください。
リング外径とヘッドの差が大きくなってしまっています。
リングは若干の収縮なのに対し、ヘッド部分は強めに縮んでしまっていますね。
このような事も起こります。
「鋳造は収縮するもの」
という前提で作品を作っていきましょう✊🏼
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